海外ドラマ「エルズベス」「マトロック」新作の魅力を解剖!型破りな弁護士が事件に挑む話題のドラマがJ:COM STREAMで見放題最速配信

パラマウントの人気ドラマ「エルズベス」シーズン3と「マトロック」シーズン2がJ:COM STREAMで見放題最速配信されている。

「グッド・ワイフ 彼女の評決」「グッド・ファイト」に登場した人気キャラクター、エルズベス・タシオニを主人公とする「エルズベス」は、キャリー・プレストン演じる型破りながら鋭い洞察力を持つ弁護士エルズベスがニューヨークで発生した殺人事件に挑むさまを描いた犯罪ドラマ。一方、キャシー・ベイツが主演を務めた「マトロック」では、若い頃に成功を収めたのち、70代にして再び第一線へと復帰した敏腕弁護士マデリン・マトロックが謙虚な振る舞いを武器に、名門事務所で難事件を解決していくさまがつづられる。

映画ナタリーでは話題のドラマ2本の見放題最速配信を記念し特集を展開。イラストレーター・チヤキの描き下ろしイラストと、ライター・柴﨑里絵子のレビューで両作の魅力を紐解いていく。

イラスト / チヤキ文 / 柴﨑里絵子

「エルズベス」ビジュアル

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「エルズベス」シーズン3

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「マトロック」ビジュアル

「マトロック」ビジュアル

「マトロック」シーズン2

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話題の海外ドラマ「エルズベス」「マトロック」の世界をチヤキが描き下ろし

プロフィール

チヤキ

イラストレーター。女性や動物のイラストを中心に、グッズのイラストや似顔絵、マンガも手がける。著書「チヤキのファッションぬり絵」が販売中。

柴﨑里絵子レビュー

「エルズベス」は不思議な高揚感をくれるドラマ

このおばさまをなめるな、危険!

大量のバッグを肩にかけ、全身色や柄に包まれた女性がニューヨークの街を駆け回る。高級レストランでも、テレビ局でも、富裕層のペントハウスでも、彼女はずいぶん場違いに映る。だが、その場違いな女性こそが、誰よりも鋭く人間を観察している──それが「エルズベス」だ。

「エルズベス」シーズン3より、キャリー・プレストン演じる弁護士エルズベス・タシオニ

「エルズベス」シーズン3より、キャリー・プレストン演じる弁護士エルズベス・タシオニ

犯罪サスペンスと聞くと、重厚でダークな作品を思い浮かべる人も多いだろう。しかし本作は、そこを軽やかに裏切ってくれる。殺人事件を扱いながらも、観終わったあとに残るのは、「なんだか元気をもらった」という感覚だ。シーズン3は、その魅力がますますパワーアップしている。

主人公はエルズベス・タシオニ。シカゴで活躍していた有能な弁護士だったが、司法省からニューヨーク市警に監査役として派遣されている。キャリア年数などから考えると、推定50代後半だろう。ど派手な柄物を全身に纏い、空気を読まずにどんどん話しかけてくる、一見するとちょっとウザい人だ。でもこの人をなめてはいけない。一般的なミステリーは、「犯人は誰?」を追いかける犯人当てが中心になるが、「エルズベス」は、最初に犯人を見せる「倒叙ミステリー」形式。俗にいう「刑事コロンボ」スタイル、日本だと東野圭吾の「容疑者Xの献身」や湊かなえの「告白」に近い感覚だ。だからこそ、このドラマの醍醐味は、エルズベスが相手の嘘をどのようにして崩していくのかにある。しかも彼女の武器は、鋭い尋問でも、圧をかける取り調べでもない。むしろその逆で、「その服、素敵ね」「そのお仕事、面白そう!」と世間話をするように、するすると相手の懐へ入り込んでいく。犯人たちは、エルズベスのことを最初は「厚かましいけど、天然で無害なおばさん」くらいにしか思っていない。だからこそ、つい気を許してしまうのだ。しかし実際のエルズベスは、誰よりも人間観察に長けた人物。人の表情や沈黙、部屋の小物にいたるまで、些細な違和感を拾い集めながら真実へ近づいていく。ただ、本来なら緊張感のある心理戦のはずなのに、エルズベスがいるだけで、どこかコミカルな空気になってしまう。特に、エルズベスを見下している人ほど、最後に鮮やかなしっぺ返しを食らう展開は実に痛快だ。そして、この油断と見抜き合いの面白さをさらに盛り上げているのが、毎回登場する豪華ゲストスターたちだ。

豪華ゲストスターたちの悪の顔

シーズン3の幕開けとなる第1話「イエス、アンド…」では、「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」で知られるスティーヴン・コルベアが、傲慢で嫌われ者の深夜番組ホスト役として登場。実際のコルベアは知的で温厚なイメージが強いだけに、「いい人の仮面をかぶった、スタッフから嫌われている男」をノリノリで演じているギャップがたまらない。しかも事件が発生するのが、ニューヨークらしい深夜トークショーの舞台裏という設定も絶妙だ。トークショーを1話つくるのにどれだけの人が関与しているのか、脚本家ルームのピリついた空気や、番組制作のドタバタなど、ショービジネスの裏側あるあるも存分に堪能できる。

「エルズベス」シーズン3には、スティーヴン・コルベアが、深夜番組ホストであるスコッティ・ブリストル役(右)で出演している

「エルズベス」シーズン3には、スティーヴン・コルベアが、深夜番組ホストであるスコッティ・ブリストル役(右)で出演している

第3話「嘆きの妻」では、モデルで俳優のジュリア・フォックスが、夫の死を悼むインフルエンサーという強烈な役柄で登場。亡き夫への悲しみをブランド化し、リアリティ番組で人気を集める女性という、いかにも現代アメリカらしい設定だ。ジュリア・フォックス本人のキャラクター性も重なり、リアリティショー的なカオスとハイファッション感が全開。さらにシリーズ全体を通して見ると、マシュー・ブロデリック(映画「プロデューサーズ」)、ジェシー・タイラー・ファーガソン(ドラマ「モダン・ファミリー」)、ジェーン・クラコウスキー(ドラマ「30 ROCK/サーティー・ロック」)など、アメリカのドラマやブロードウェイでおなじみの俳優たちが続々登場。しかも、多くがクセの強い悪役を全力で楽しんでいるのが伝わってくる。アメリカのエンタメ番組をよく観る人ほど、「今回はこの人が犯人!?」というワクワク感も大きいはずだ。

I LOVE NEW YORK

そして「エルズベス」を語るうえで欠かせないのが、「ニューヨーク観光ドラマ」としての魅力である。本作のニューヨークは、危険で冷たい大都会というより、歩いているだけで何か起こりそうな街として描かれている。というのも、エルズベス自身が、観光客目線を持った人だからだ。シカゴからやって来た彼女は、エンパイアステートビルディングやロックフェラーセンターのアイススケートリンク、タイムズスクエアなどにいちいち感動する。その姿がとにかくチャーミングなので、視聴者も自然と彼女と共にニューヨークの街を満喫する感覚を味わえる。シーズン3の第2話「人形たちの午後」ではソーホーやロウアー・マンハッタン、第3話「嘆きの妻」ではスタテン島フェリーから望むマンハッタンの景色など、ニューヨークらしさがたっぷり詰め込まれている。しかも、高級不動産、リアリティ番組、セレブ文化など、NY上流社会カルチャーを軽やかに風刺しているのも本作の魅力だ。なぜなら、エルズベス自身が、その世界に対して好奇心を持ち、「もっと知りたい!」と目を輝かせているからだ。

「エルズベス」シーズン3より、左からキャリー・プレストン演じるエルズベス・タシオニ、スティーヴン・コルベア演じるスコッティ・ブリストル

「エルズベス」シーズン3より、左からキャリー・プレストン演じるエルズベス・タシオニ、スティーヴン・コルベア演じるスコッティ・ブリストル

ストーリーも舞台も魅力満載だが、結局、視聴者は事件そのものより、エルズベスがいる空気に惹かれているのかもしれない。年齢も、ファッションも、周囲の視線も気にせず、自分の「好き」や「知りたい」を信じて突き進む。そんな彼女がニューヨークを歩いているだけで、この街は少し楽しそうに見えてくる。「エルズベス」は、そんな不思議な高揚感をくれるドラマなのだ。

「マトロック」は単なる法廷ドラマでは終わらない

母親の執念。75歳が繰り広げる復讐劇

「マトロック」が本当に描いているのは、法廷での駆け引きではない。守れたはずの娘を失った母親が、真実に取り憑かれていく姿だ。キャシー・ベイツ主演の「マトロック」は、一見すると痛快な法廷ドラマに見える。70代にして第一線へ復帰した女性弁護士マデリン・“マティ”・マトロックが、人当たりの良さで相手の警戒を解きながら、老獪な知恵で難事件を解決していく。もちろん、そこに嘘はない。だが本作は、単なる法廷ドラマでは終わらない。

「マトロック」シーズン2より、キャシー・ベイツ演じる弁護士マデリン・“マティ”・マトロック

「マトロック」シーズン2より、キャシー・ベイツ演じる弁護士マデリン・“マティ”・マトロック

マティが巨大法律事務所ジェイコブソン・ムーアへ潜り込んだ理由は、娘エリーを死に追いやった「オピオイド隠蔽事件」の真相を暴くためだった。製薬会社ウェルブレクサと法律事務所は、中毒性の危険を示す重要な研究データを隠蔽し、結果、多くの依存症患者を生み出した。エリーもまた、その犠牲者の一人だったのだ。つまり「マトロック」は、法廷ドラマでありながら、同時に自身の知恵と経験を使って正義を暴こうとする、「母親の復讐劇」でもある。そしてシーズン2に入った本作は、その怒りをさらに危険な領域へ押し進めていく。ちなみに、アメリカでは1990年代以降、製薬会社による虚偽広告をきっかけにオピオイド依存が深刻な社会問題化した。現在問題となっている違法薬物フェンタニル(通称ゾンビドラッグ)の蔓延も、その延長線上にある。つまり「マトロック」が描いているのは、決して架空の悲劇ではない。だからこそ、本作には生々しいリアリティが宿っているのだ。

法廷外で展開されるスリリングな心理戦

そんな物語で面白いのは、法廷内以上に、法廷外で生まれる張り詰めた空気を描いている点だろう。オフィスで交わされる会話や、相手の表情を探る沈黙。家族を守るためにつかれる数々の嘘。「マトロック」には派手な銃撃戦もカーチェイスもないが、誰が誰を裏切るのか分からない心理戦が、下手なサスペンス映画以上のスリルを生み出している。しかも厄介なのは、このドラマに登場する嘘が、完全な嘘ではないことだ。それぞれの言い分には、必ずなにがしかの真実が含まれている。その曖昧さが、本作を単純な勧善懲悪では終わらせない。

「マトロック」シーズン2より、スカイ・P・マーシャル演じるオリンピア・ローレンス。マティの上司であり友人でもある

「マトロック」シーズン2より、スカイ・P・マーシャル演じるオリンピア・ローレンス。マティの上司であり友人でもある

友情か、家族か──裏切りから始まるシーズン2

シーズン2では、その空気がさらに危うさを増していく。シーズン1の終盤で、マティの上司であり友人でもあったオリンピア(スカイ・P・マーシャル)は、マティが身分を偽って事務所へ潜入していたことを知る。そして彼女は、元夫ジュリアン(ジェイソン・リッター)が、ウェルブレクサ事件の隠蔽に関与していた事実にも直面する。しかしオリンピアには、彼との間に築いた家族がいる。法律家として正義を選ぶのか。それとも母親として家族を守るのか。オリンピアは、そのどちらかの選択を迫られる。このように、誰か一人を完全な悪として描かない点も、本作の巧妙なところだろう。マティにも正義があり、オリンピアにも守りたいものがある。だからこそ二人の関係は、単純な対立では終わらない。シーズン2で特に見応えがあるのは、友だちだったはずの二人が、互いの腹を探り合う心理戦だ。表面上はビジネスパートナーを演じながら、裏では互いを疑い、利用し、出し抜こうとする。オリンピアが隠した秘密を暴くため、マティは夫エドウィン(サム・アンダーソン)と共に周到な罠を仕掛ける。その姿は、もはや弁護士というより工作員に近い。つまり「マトロック」は、法廷ドラマであり、復讐劇であり、スパイミステリーでもあるのだ。そして、そのすべてを成立させている最大の理由が、キャシー・ベイツの存在感にある。

「マトロック」シーズン2より、キャシー・ベイツ演じるマデリン・“マティ”・マトロック(右)、スカイ・P・マーシャル演じるオリンピア・ローレンス(左)

「マトロック」シーズン2より、キャシー・ベイツ演じるマデリン・“マティ”・マトロック(右)、スカイ・P・マーシャル演じるオリンピア・ローレンス(左)

年齢を武器に変えたキャシー・ベイツの圧

キャシー・ベイツといえば、映画「ミザリー」(1990年)で、とある作家に異常な執着を抱くファン、アニー・ウィルクスを演じ、アカデミー賞の主演女優賞を受賞した名優だ。長年舞台で高い評価を受けながらも、この作品によってようやく映画スターとして広く認知された。しかし、彼女はそのとき42歳。当時のハリウッドでは、40代以降の女性に与えられる主演級の役は極端に少なかった。たとえば、キャリア初期から主演女優として作品を与えられてきたメリル・ストリープのような存在とは対照的に、ベイツは長らく、クセの強い役柄を担うキャラクター俳優としてキャリアを築いてきた。だが、その積み重ねこそが、現在の彼女の演技を唯一無二のものにしている。顔に刻まれたシワ。人を見抜く鋭い眼差し。怒りを押し殺した沈黙。その一方で見せる、おばあちゃんのような柔らかな笑顔。「マトロック」では、すべてが武器になっている。「ミザリー」で彼女がハンマーを振り回していたとすれば、「マトロック」で振るうのは会話と観察力だ。相手の油断を誘い、見抜き、追い詰める。その知性の恐ろしさは、年齢を重ねた今の彼女だからこそ成立している。しかもシーズン2では、マティ自身の家庭にも新たな危機が訪れる。孫アルフィの父親だと名乗る男が現れたことで、キングストン家がかろうじて保ってきた平穏は揺らぎ始めるのだ。さらに、マティがウェルブレクサ事件を「ニューヨーク・タイムズ」へリークしようとしたことで、事務所内ではスパイ探しまで始まっていく。つまり今の「マトロック」は、誰を信じるべきかが絶えず揺らぎ続けるドラマになっている。

「マトロック」シーズン2より、キャシー・ベイツ演じるマデリン・“マティ”・マトロック

「マトロック」シーズン2より、キャシー・ベイツ演じるマデリン・“マティ”・マトロック

だが本作が単なる陰謀劇で終わらないのは、その根底に常に家族への愛というテーマが流れているからだろう。娘を失った母親。子どもを守りたい元夫婦。孫の未来を案じる祖父母。誰もが「愛する人を守りたい」という感情から動いている。だからこそ、その選択は時に正義を歪め、誰かを傷つける。「マトロック」は、その痛みを非常に大人びた視点で描いている作品だ。まだ、日本で配信されているシーズン2は第6話まで。しかし、その時点で本作は従来の法廷ドラマの枠を大きく超えている。会話ひとつが銃撃戦以上のスリルを生み、穏やかな笑顔が脅迫より恐ろしく映る瞬間がある。そして何より、人生を積み重ねた俳優にしかできない演技がここにはある。「マトロック」とは、若さでは決してたどり着けない強さと、人生を積み重ねてきた人間への敬意に満ちたドラマなのだ。

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