itti(イッチ)の部屋

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ー 泡かたの恋 ー 24

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夕食を終え片付けを済ませると、みんなで映画でも観ようとリビングのソファーに座ってテレビをつけた。

金森がチャンネルを合わせてリモコン片手に選んでいると、「普段どんな映画見てんの?」とアツシが金森に尋ねる。


「アツシたちが観ない様な作品だよ」と言う金森。遠回しに言うから分からなくて、俺は「エロ?」と聞いてみた。


「ははは、それ、お前らは観るだろ!まあ、オレも観るけどさ、でもオレのは男同士のだから」


「は?!」


アツシはポカンと口を開けて言った。

そして俺はというと焦った。

金森はアツシに話したんだろうか。

いや、だって二人は……


あの保健室での会話を聞けば二人の関係は想像出来る。でもアツシは驚いているし、一体どういう事?一瞬で俺の頭の中はパニックになる。

聞きそびれていた事が浮かんでくると金森の顔をじっと見つめた。


「あれ?オレ言わなかったっけ、ゲイだって事」

まるで既に承知しているものとして金森は話す。


「…え、そうなの?」と、アツシは小声になった。


いや、知らなかった?と、俺はアツシの顔を見て驚く。

あの日、金森の背中にあったキスマークはアツシが付けたものじゃなかったって事?


「あー、まあどうでもいいや、とにかく何か観たい物ある?」


金森はチャンネルを変え乍ら尋ねた。


「俺、ホラーが観たい」

この場の空気を変えたくて、そんな事を言ってしまった俺。

アツシは口を開けたまま固まっていた。


「じゃあ、これでいい?最近映画になってたやつ。アメリカでは結構話題になってたから」

「うん、いいよ」


金森は俺の隣に腰を下ろし、映画をスタートさせた。


3人掛けのソファーに座ってテレビ画面を見つめる俺たちだったが、アツシはまだ黙ったまま。俺はというと、内心ではドキドキしていたが必死に平常心を装っていた。

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― 泡かたの恋 ー 23

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「マジで美味いな、このナポリタン!アツシすごい!!」


金森は口に運びながら喜んだ。

確かに、俺も初めてアツシのナポリタンを食べて驚くばかりだ。こんな料理を作れるなんてちっとも知らなかった。


「そんなに褒められたら照れるなぁ。まあ、たまに家でも作ってるんだけどさ、みんな喜んでくれるよ」

「だろうなぁ、…奥田は?料理とかしないの?」


咄嗟に聞かれて「え?…あー、ラーメンぐらいは」と言ってしまった。

実際、母親がひとりで料理を担当している俺の家。アネキも妹も手伝うぐらいはするが自分で一から料理をしたところは見た事がなかった。俺も、自分の為に作るラーメンが唯一の手料理だ。


「アツシはきっといい旦那になるんだろうな。家事は分担とかしてさ」


金森は言いながら美味しそうにナポリタンを頬張った。


「まあな、これからの男はちゃんと家事も出来なきゃ、だな。それに大学とか行ってひとり暮らしするかもしれないしさ。自炊出来なきゃ金がいくらあっても足りんだろ」

アツシは照れながら金森に言ったが、大学の事を考えているのかと驚いた。そんな話はまだした事がない。


「東京住みなのにひとり暮らし?家から通えばいいのに」と、金森に言われて「東京の大学に行くかどうかわからないだろ」と返した。


俺は咄嗟に「え、アツシどこの大学に行くとか決めてんの?」と尋ねた。

俺もアツシも勉強が好きな方じゃない。大学はなんとなく就職に有利なのかと思っているだけで、考えてみたら甘い考えだった。何処かには入れるだろうと思っているんだから。


「まあ、ぼんやりと。オレ、体育の教師になりたいんだよね、中学とか高校の」

「え、マジで?」


俺は驚いた。長年一緒につるんでいるのに、こんな話は初めて聞く。アツシのやりたい事。


「アツシ似合いそう!いいよ、体育教師。バスケの顧問とかもイケるっしょ」と金森は声をあげた。


「ああ、いいかもな」

温度の低い声を出す俺は、そのままナポリタンを口に入れる。

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ー 泡かたの恋 ー 22

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金森のアルバムに映る父親は、クウォーターといっても日本人の血が濃い様に見える。

前に金森が話した様に、瞳の色が少し薄く見えるが、普通にカッコイイ日本のお父さんだった。


「お母さん、やっぱり美人だな。おばあちゃんも」


アツシは金森と母親と祖母の3人が映った写真を見ると言った。少し前の様で、金森も今より幼い感じに見える。


「それ、小6の夏休みのだよ。そっから5年経ってるからさ、今とはちょっと違うけどな」

そう言って笑う金森。

それでも、顔立ちはやはり母親の家系に近いと思った。


中学、高校になると写真はかなり少なくなって、昨年からは写真を撮っていないと言った。

父親が亡くなって旅行に行く事もなく、祖母とも葬儀以来会っていなかったらしい。

今はどんな姿なのか想像するしかないが、それでも品の良い笑顔の可愛い婦人だろうと思う。


「ところでさ、晩飯どうする?何か買ってくる?それとも作る?」


時間を確認すればもう5時すぎ。金森の問いに俺はアツシの顔を見た。


「そうだな、一応金は持って来ているけど…。何か作れるものあるの?」と、金森を見て尋ねるアツシ。俺も金は持っているが、すっかり晩飯の事は頭から消えていた。てっきり金森の所で食べる物だと思い込んでいたんだ。


「スパゲティーとかうどんとか、麺類はあるよ。まあ、適当に冷蔵庫を漁れば何かつくれるかもな」

金森はそう言うとキッチンの方に向かった。


リビングから見えるキッチンで、冷蔵庫を開けて中を確認している金森に、「ベーコンある?」とアツシが尋ねる。

「あるけど」

「なら、オレがナポリタンを作ってやるけど」


アツシは立ち上がるとキッチンの方に歩いて行く。


「作れるの?」と驚く金森に、アツシは「合宿の時に作ったからさ。玉ねぎとピーマンとベーコンがあればできるよ」と笑った。

そういえば、バスケ部は夏の合宿をどこかの施設でやったと言っていた。自炊をしなければいけなくて大変だったとか。


「じゃあ、アツシのナポリタンで決まり。奥田も手伝って!」

金森は俺に向かって言う。


「え、俺?!」

「そうだよ、手伝いくらいは出来るだろ?」

「…、ん、まあ、出来ると思うけど」

「なら早くこっち来いよ」


金森に急かされて渋々キッチンに向かう俺。


デカイ男ふたりに挟まれて、金森はちょっと窮屈そうだったが、包丁とまな板を用意すると笑みを浮かべて俺とアツシの顔を交互に見た。

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