紅茶を飲んで身体が温まった後、アツシが金森の部屋を見たいと言って案内してもらう。
「あれ、案外普通の部屋だな」
アツシは何を想像していたんだろう。ドアが開いて部屋が見えると言った。確かにリビングの感じとは真逆。黒いパイプのベッドと黒のローチェスト、シンプルな机と椅子。俺の部屋とそう変わらない。
「オレのは静岡で使ってた家具だからさ。おばあちゃんの趣味とは違う」
そう言って金森は笑った。
「まあ、そうだよな。拓人の趣味がアレだったらちょっと引くかも」
「おい、失礼だぞ」
アツシを叱ると、肩を上げてゴメンと言う。
だが、内心では俺も思ってた。
「ところでさ、あの袋の中身、何なんだよ」
パイプベッドの横に置かれた紙袋。あれは金森が買ってきたという物。中身は夜のお楽しみ、だと笑っていたが。
「だから、夜になったら分かるって。取り敢えずリビングに戻ろう」
金森は俺とアツシの背中を押すと部屋から追い出した。
◇
夕方まで俺たちはリビングでボードゲームをしながら遊んだ。
普段は、パソコンやスマホでゲームをしているから、こんな風にボードゲームをするのは新鮮だった。でも、やり始めると結構面白くて、記憶力が求められるゲームは金森が得意で、俺もアツシもことごとく負けてしまった。
「はぁー、ちくしょう、普段頭使わないからダメだー!!」
アツシは3回目に負けた後叫んだ。
俺も苦手なゲームだったが、なんとかビリにはならずにいて、アツシが居てくれて良かったと思った。
「拓人はパソコンでやるゲームとかしないの?」
「あー、前はやってたんだけど、ここに来てからはおばあちゃんの目があって」
「なに、けっこう煩い感じ?」
「いや、珍しいのか一緒にやらせてほしいって言われてさ。教えるのが面倒で」
「おー、今どきのばあちゃんじゃん!教えてあげたらいいのに」
「やだよ!始まって5秒で負けるんだから。冬休みの間にオレはゲームを封印したんだ」
「ははは、おもしれぇ。拓人のばあちゃん見てみたいな。どんな人?」
アツシと金森のやり取りを聞きながら、俺も笑ってしまった。
孫と一緒に遊びたいって、面白い人だ。しかも男の子と遊ぶのって、俺たちの年齢とのギャップも大きいだろうに。
「金森の昔の写真ってある?」と、俺が尋ねると、うん、と言って立ちあがり、テレビ台の下の扉を開けて中から分厚い本のようなものを取り出した。
「アルバム?」
「父親が亡くなる少し前までのな。おばあちゃんの写真もあるよ」と言ってそれを持ってくるとテーブルに置いた。
早速アツシがアルバムをめくった。
そこには赤ちゃんの金森の姿があって、今と違って髪の毛はくるくるで、少し色が薄い茶色。完全にハーフぽく見える。成長するにしたがって髪の色は黒に近くなるのだろう。
「かわいーー!拓人女の子みたいじゃん」
アツシは写真を指差すと金森に言った。
パッチリとした大きな瞳に長い睫毛。口元から覗く小さな歯が幼さを物語っている。確かに女の子と言われたらその通りに受け取ってしまうだろう。
「可愛いのは今だって変わってないけどね」と金森が言うので、俺もアツシも顔を見合わせると笑ってしまった。